日本学術会議の委員任命拒否に対する抗議声明
2020年 10月1日、日本学術会議が新委員として推薦した 105 名のうち6名を、政府が 任命を拒否しました。日本学術会議法第7条、第17条は「推薦に基づいて、内閣総理大臣 が任命する」と定め、第3条は独立して職務を行うと定めております。そして、政府は国会 でも「実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません」 (1983年 5月12日参議院文教委員会)と形式的任命に過ぎない旨、明確に答弁しています。それにもかかわらず、菅政権は今回、上述の6名を任命拒否しただけではなく、その理由すら説明していません。そればかりか、世論の批判を前にして、日本学術会議を行政改革の対象とすると発表し、論点のすり替えを行い、自らの正当性を印象づけようとしています。
今回、任命拒否にあった6名は、いずれもそれぞれの専門分野で学術的に高く評価されて いますが、2015年の安保法制に反対の立場を表明していた学者です。安保法制の違憲性に 対しては全国22の裁判所や支部で25件の提訴がなされ、未だに結審していません。日本学術会議は、科学者が「地球環境と人類社会の調和ある平和的な発展に貢献すること」(日本学術会議憲章、前文)を謳い、「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年)において は、軍事研究を行わないとした 1967年の声明を継承しています。上述の6名に対する政府 の任命拒否は、安保法制への反対意見を封じ込めようとするのみならず、日本学術会議の独立性を奪うことによって軍事研究拡大への道を開く意図が濃厚と考えざるを得ません。
現場や専門家の合議に基づく被推薦人を、法規上の上位者が形式的に任命する、という手続きは、大学その他の民主的な組織において広く行われています。それは、組織の構成員の 責任感を高め、組織それ自体が自律的に機能し、発展するのに寄与してきました。しかし政府による今回の委員任命拒否を認めると、組織の決定が上位者の恣意に左右されかねない 悪しき慣行を作り出します。その悪影響は甚大です。大学の運営はいうに及ばず、憲法第80 条1項に定める裁判官の任用すら拒否対象になり、三権分立という民主主義社会の根幹すら揺るがさざるを得ません。
以上の理由から、日本学術会議の委員任命拒否の撤回を強く求めます。
2020年10月26日
安全保障関連法案に反対する東洋大学有志の会