抗議声明
2015年9月19日未明、自由民主党、公明党、およびそれに賛同した野党3党(日本を元気にする党、次世代の党、新党改革)は、参議院において集団的自衛権を行使する安保関連法案を可決、成立させた。私たちは、憲法を踏みにじる、この暴挙に対して最大限の怒りを込め、法案成立に強く抗議し、ただちに廃止することを求める。
憲法9条には、「1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記されている。
多くの憲法学者ならびに法曹界の有識者、歴代の内閣法制局長官が述べるように、この法律は、憲法9条に違反するものである。にもかかわらず、強引な解釈改憲によって、この法律を成立させたことは、「立憲主義」を踏みにじることにほかならない。憲法98条に基づき、国の最高法規である憲法に違反したこの法律は「効力を有しない」ことを主張するとともに、憲法99条に基づき、政府は「憲法を尊重し、擁護する」ことを強く要請する。
安倍首相は、安保関連法を「戦争を未然に防ぐもの」と評しているが、実態はまったく逆であり、この法律によって行使される集団的自衛権によって、戦後70年間にわたり戦争に巻き込まれなかった唯一の被爆国・日本が、再び戦禍に巻き込まれる可能性が高まることになったことは火を見るよりあきらかである。おそらく遠くない未来に派遣されることになる自衛隊員らが、戦争に巻き込まれ、負傷するだけでなく、最悪の場合には、殺されること、そして誰かを殺すことになることは想像に難くない。「誰の子どもも殺させない」とは、安保法案に反対するママの会のスローガンであるが、私たちも大学人として、「学生を含むすべての若者を殺させない」ことを宣言したい。私たちは、戦後の「平和主義」をこれからもいつまでも守らなければならない。
国民の6割以上が、この法案を今国会で成立させるべきではないと表明していた。そして、学生や若者たちをはじめ、戦争を体験した高齢者、社会人、小さい子をつれたママたち、そして本来なら研究室に籠っている学者たちさえもがデモに参加した。8月30日のデモでは10万人以上の老若男女が参加し、国会を包囲した。こうした民衆の「声」を無視しておこなわれた強行採決は、「民主主義」をないがしろにするものに他ならない。選挙は白紙委任を意味しない。選挙で選ばれた政府であってもその時々にあげられる民衆の声を真摯に聴かなくてはならない。この民主主義の基本原則に立ち返ることを強く求める。
日本国憲法には、権利は「不断の努力」(憲法12条)によって守らなければならないことが明記されている。私たちは、この法案の廃案をめぐる運動に参加して、民衆がまさに不断の努力によっていままで憲法を守ってきたことを実感した。民衆が声をあげるという運動の経験と思想の蓄積が、今後も憲法を守り、「灯る戦の火種」を消し続けることになることを再確認した。
私たちはこうした経験を踏まえて、安倍政権の独裁的な暴挙に強く抗議し、日本国憲法を遵守し、この法律の廃止をめざすこと、そして、立憲主義・平和主義・民主主義を再び、われわれの手に取り戻すことを主権者としての自覚と決意をこめて表明する。
安保関連法に反対する東洋大学有志の会
2015年9月22日